マンションの蛍は消えるのか??

マンションコラム

マンション生活アドバイザーのHAJIMEです。

十数年ほど前、蛍族という言葉がはやった。

マンションや共同住宅の居室内での喫煙が敬遠され始め、喫煙者は煙草をバルコニーで吸うようになり、夜にマンションの外から見ると蛍の火のように見えることから名づけられた。

蛍はきれいな環境でしか育たないといわれるが、マンションの蛍はきれいな環境を守るために消えようとしている。

それは、嫌煙権運動の広まりによってである。

嫌煙権について、2019年に施行された健康増進法では、住宅は直接の対象ではなく、他人の権利を侵害するような喫煙はやめるようにとの努力義務が課されているにすぎない。

では、法律の立て付けはどうなっているかというと、煙草を吸うことは個人の嗜好に関することなので、原則自由だが、他人の権利を侵害した場合は不法行為として損害賠償の対象になる。その場合の基準は被害者側の受忍限度を超えた場合である。受忍限度は、特定の個人ではなく広い意味の常識人を対象とする。

従って、空気がこもらない屋外で煙草を吸うことは、特に規制地域でない限り違法ではないというのが一般的で、蛍族という言葉もそれを前提にしてきた。

しかるに、世間の健康志向そして嫌煙権運動の広まりに従い、日本では、煙草に関する規制は世界の常識を超えて広まってきた。海外の多くの国・都市では屋外の喫煙は原則自由だが、日本では地方公共団体が一定のと域内の屋外の喫煙を禁止し、違反者に罰則を科している。路上喫煙に厳しいといわれるシンガポールでは、煙草のポイ捨てに対しては厳格な罰があるが、路上のいたるところに灰皿が置かれ、その灰皿周辺の喫煙は許されている。

それでは、蛍族は規制されるのでしょうか。

パルコニーは居住者の専用使用権のある共有物にすぎないので、管理規則で禁止することは可能だ。ただし、管理規約の改正行為そのものが個人の自由を侵害するとして訴訟になる場合があるということは覚悟しなければならない。

他方、管理規則で規制されなければ、すべて合法かというとそうではない。他人の受忍限度を超えて喫煙を繰り返した場合や、被害者が喘息とかの持病があったりして何度も禁煙の要請しているのに反して喫煙をするような特段の事情がある場合などは損害賠償の対象となるとの下級審の判例がある。

ただ、この下級審の判例でも言っているように、マンションに入居することは、共同生活を行うことが前提になっているので、隣人の自由な権利は受忍限度の範囲内では我慢する必要がある。

やはり、隣人同士話し合って解決するかしか方法がないのかもしれない。

蛍族の一人である私もちょっとは気を付けよう。

マンション生活アドバイザー

HAJIME

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